DIARY 夏目 ハルの写メ日記
「会話が止まると気まずいですか?」 そんな質問をされたことがある。 僕は首を横に振った。 むしろ、安心している人ほど静かな時間が増える気がする。 コーヒーを飲みながら外を眺める時間。 何も話さず、同じ景色を見る時間。 言葉がなくても落ち着ける相手って、案外少ない。 だから僕は、沈黙を埋めようとはしない。 静かな時間まで心地いいと思ってもらえたら、それだけで十分だから。
この仕事を始めてから、よく考えるようになったことがある。 それは、人との距離。 近すぎても落ち着かないし、遠すぎても心は開かない。 そのちょうどいい距離って、人それぞれ違う。 だから最初は、相手の呼吸を感じるようにしている。 話す速さ。 笑うタイミング。 視線を外す瞬間。 何気ない仕草の中に、その人らしさがある。 急いで距離を縮めるより、「この人といると心地いいな」と思ってもらえる方が嬉しい。 そうして少しずつ空気が柔らかくなると、自然と表情も変わっていく。 その瞬間を見るたび、この仕事を好きに...
スマホの写真はあまり見返さない。 でも、もらったメッセージは時々読み返す。 嬉しかった言葉、笑ったやり取り、何気ない一文。 言葉って、その時の空気まで思い出させてくれるから不思議。
誰かと会った帰り道は、あまり音楽を聴かない。 その日の会話を思い出しながら歩くことが多い。 「あの話、楽しそうだったな。」 「あそこで笑ってくれたな。」 そんなことを考えている。 反省する日もある。 もっと聞けばよかったかな、とか。 でも、それも含めて人と会う時間なんだと思う。 一回一回が違うから面白い。 だからこの仕事を何年続けても飽きないんだろうな。
カフェへ行くと、店員さんの接客を見てしまう。 すごいサービスを期待しているわけじゃない。 コーヒーを置くタイミングとか、「ありがとうございます」の言い方とか。 そんな小さなことを見てしまう。 きっと職業病なんだと思う。 人は何を言うかも大切だけど、どう伝えるかでも印象は変わる。 だから僕も、言葉だけじゃなく、空気まで心地よくできたらいいなと思っている。
会話の途中で、「最近、何かハマってるものありますか?」って聞くことがある。 深い意味はない。 でも、その質問でその人らしさが見えることが多い。 急にパン作りを始めた人。 朝の散歩にハマっている人。 韓国ドラマを一気見して寝不足になった人。 話している本人が楽しそうだと、こっちまで嬉しくなる。 僕は、人が好きなものを話している時間が好きなんだ。 少し早口になったり、目が輝いたり。 そんな瞬間を見ると、「いい時間だな」と思う。
昔から、待ち合わせには少し早く着く。 5分か10分くらいだけど。 急かされるのが苦手だから、自分が待つ方が気が楽なんだ。 この日も近くのカフェでコーヒーを飲みながら外を眺めていた。 「ちゃんと会えるかな」なんて心配はしていない。 でも、待っている時間は嫌いじゃない。 どんな話をしようとか、今日はどんな一日になるんだろうとか、そんなことを考えている。 予定をこなす感覚じゃなく、「人に会う時間」として過ごせるのが好きなんだと思う。 だから僕は、時間ぴったりに会うことより、会った瞬間にお互いが笑顔にな...
この前、友人と食事をしていた。 特別面白い話をしていたわけじゃない。 昔の失敗談を話して、お互い笑って、それだけ。 帰り道で思った。 「今日はたくさん笑ったな」って。 大人になると、大笑いする機会って意外と減る。 だからこそ、自然に笑える相手って貴重なんだと思う。 僕も誰かにとって、そんな時間を作れる人でいたい。
このお仕事は人の話を聞くのもメインで、仕事をしていると、「聞くのって疲れませんか?」と聞かれることがある。 でも、僕はそう思ったことがあまりない。 むしろ、その人しか知らない話を聞けるのは面白い。 好きなもの、昔の思い出、最近あった出来事。 同じ人なんて一人もいない。 だから毎回新しい発見がある。 たぶん僕は、話すことより「知ること」が好きなんだと思う。 それが今の仕事を好きな理由の一つかもしれない。
この前、目的地まで少し遠回りをしてみた。 特に理由はない。 天気が良かったから、なんとなく歩いてみようと思っただけ。 途中で小さな喫茶店を見つけて入ってみたら、すごく落ち着くお店だった。 もし急いでいたら、きっと気づかなかった景色。 昔の僕は効率ばかり考えていたけど、最近は予定どおりじゃない時間も好きになった。 人生も同じなのかもしれない。 遠回りしたから出会えるものって、意外とあるんだよね。